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寄稿文
ビックリ 帆船三姉妹

淡路博和(2期)


 2016年10月11日の夜9時、突然、我が家の電話がリリリーンと鳴り響きました。今頃、一体誰だろう、と思って受話器を耳に当てると、
 「安中に来ています!」
 幾分興奮気味な女性の声…
 「えっ、どなたですか?」
 「大阪の奥野です」
 これにはビックリ!、大阪の奥野さんとは、実は「奥野帆船工芸」の奥様のこと。ご夫妻で車を飛ばし、先ほど安中杉並木の「ルートイン」に到着したというのです…。縁あって数回の文通はありましたが、お会いするのは初めて…。これは大変!
放って置くわけにはいかない。「明朝9時にお迎えに行きますから」と約束して受話器を置きました。

 奥野帆船工芸とは大阪府門真市にあり、所謂「帆船」の模型を、奥野禮三・菊江様ご夫妻で47年間も手作りし続けている工芸社です。

 翌朝9時、ルートインのドアを明けると、お二人揃って待っておられました。御辞儀をして、「初めまして淡路です。遠路、よくお出でになりました。安中を御案内しますよ」と外に出ると…、お二人が車から徐に持ち出したのが、平べったい四角の大きな3つの箱。中から取り出したのが、立派な帆船の模型3種類。

 うわーっ凄いと見とれていると、「これを淡路さんに差し上げます…」とのこと。

 えーっ…これには2度ビックリ、とんでもない!、こんな立派なものを受け取るなんて…。私はとっさに、
「こんな立派なものを私がいただいても宝の持ち腐れ。どうでしょうか。これから御案内する新島学園に差し上げてもらえませんか」
「それは淡路さんのご判断に任せます。これは淡路さんに差し上げる物ですから…」

 というわけで、杉並木・新島家旧宅・有田屋・安中の町並・武家屋敷・安中教会等を見ながら新島学園に到着…。朝方、電話で奥野様御来訪の連絡をしておいたので、応接室には校長岩間秀彬先生と事務長小林郁夫氏が待っておられました。

 そこで、奥野氏御自身から岩間校長へと手渡され、大阪から遥々やって来た三艘の帆船模型が、無事に新島学園へと入港することになったのです。

 ところで、この3艘の帆船模型とは、次の写真の如きもので、青年新島七五三太が、①家族と別れて江戸を立ち、②大志を抱いて函館から脱国し、③中国上海を経てアメリカ合衆国まで乗船した3種類の船のことです。

①江戸から函館まで
快風丸 長さ36m
②函館から上海まで
ベルリン号 長さ38m
③上海からボストンまで
ワイルドローバー号 長さ36m

 なお、冒頭の写真は、学園の玄関で模型の3帆船をバックに撮った記念写真です。中央のお二人が奥野様ご夫妻です。

 写真のガラスケース入りの模型は、既に学園が同志社を通して購入していたワイルドローバー号で、これも奥野氏の作品です。今回学園に寄贈していただいたのは、快風丸とベルリン号の二艘で、合せてここに3艘の帆船模型が見事に揃ったわけであります。

 礼拝堂など学園内の見学を済ませたご夫妻を、試みに学園南方の田圃にご案内してみました。秋空の下、稲穂が揺れる遥か彼方に、赤城・榛名・妙義の上毛三山が見え、西には高く浅間山が輝いておりました。

 「わあー素晴らしい。癒やされるわ!」と奥様の歓声。
それから磯部温泉見学、原市にてお蕎麦の昼食、午後一時に安中教会へ。

 教会では真下とし子先生が待っておられて、教会内を案内してくださいました。私は私用があって仕方なく、富岡製糸場への道案内図を差し上げてお別れ致しました。

 その後、ご夫妻は製糸場を見学してから西に向かい、上田城など見学しながら大阪への帰途に付かれたとのことです。

 抑も、この奥野様ご夫妻とは、2012年9月に編纂発行した「夢故園花」(新島学園所蔵資料紹介誌)の第11号に、帆船模型製作中のご夫妻の写真をご紹介したのが奇縁となり、その後、数回の文通で知り合いになった間柄でした。

「是非、新島 襄先生ゆかりの 地 安中へお越しください」

 とお勧めしておりましたが、今回の突然のご来安、びっくりするやら嬉しいやら…。こうして初対面とは思えない貴重な巡り会いとなり、その上、素晴らしいプレゼントをいただき、感謝の思いでいっぱいです。

 帆船三姉妹は、やがて新島学園の正面玄関に揃って展示され、学園創立70周年の良き記念として、新島先生を偲びつつ、「世界を友とする心」を養ってくれることでしょう。

帆船の三姉妹が睦まじく
新島偲んで学園に並ぶ


新島同窓会報「根笹」

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